柔術の技練(打ち込み)とスパーリングはどっちが大事なの?

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ブラジリアン柔術において技の打ち込みをするのとスパーリングをするのはどっちが大切か。スパーリングだけしていればいいの? 技練だけしていればいいの?といった疑問にお答えします。

読者の方からこんな質問をいただきました。ありがとうございます。

稽古でのスパーリングに関してですが、柔術を始めて4か月になりますが、白帯の段階で、スパーリングはそれほど重要なものなのでしょうか?

スパーは軽くマススパー程度で、あとは、マウントエスケープ、パスガードの打ち込み、もしくはそれ(マウントからエスケープするまでだけのスパー)のスパー等の基本を重点的にやるのが、一番早く上達する近道ではないかと思っているのですが、、

きっちりした基本が身に付いてないままスパーをしても変に力が入り、間違った形を覚えてしまったり、ただやみくもに動くだけで、時間のムダではないのかな〜と思ってしまいます。

良かったらアドバイスお願いします。

質問は以上です。簡単にまとめると、次のような感じになるんじゃないでしょうか。

  • ぶっちゃけ基本もできてない初心者にスパーリングって必要なの?
  • それより最初は打ち込みのほうが大事じゃない?

ではこれについて僕なりの答えをまとめてみました。

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柔術においては技練(打ち込み)もスパーリングも両方大事

結論から言ってしまうと両方大事なので、どっちもやるべきです。技の練習だけに偏っていてもダメだし、なんだか分からないままスパーリングだけをしても上達するのに時間がかかってしまうでしょう。

要はバランスが大事だということです。必ずしも【技練:スパーリング=5:5】にならなくてもいいので、自分の時間や環境を考慮したうえで続けられる比率を保ったらいいんじゃないでしょうか。

ただ、それだけだとこれで話が終わっちゃうので、技練とスパーリングだけを個別に分類し、それぞれのメリット、デメリットを考えていきましょう。

柔術において技練(打ち込み)はインプット

僕が思うに柔術においてテクニックの練習はインプット(入力)作業に相当します。ここでいうインプットとは新しい情報を頭や体に入れる。もしくはすでにある知識を更新する、あるいは確認する作業だと思います。

例えば全く柔術のことを知らない人からしたらクロスガードをされても何をされているのか分からないですよね。僕も初めて練習をしたときは「何これ? 動けないじゃん」って思ってじたばたしてしまいました。

そこで初心者はクロスガードの解き方を学びます。一度じゃできるようにならないので何度も何度も練習します。やればやるほど当然技の精度が高まります。

そうこうしていると実際にクロスガードをされたときの対処方法が一つ知識として入るわけです。これがインプットになるわけです。

柔術の技練(打ち込み)で身につくこと

何度も何度も反復練習をすることで無駄な動きが排除され、余計な力をかけずに体が正しい動きを記憶するようになります。その結果、スパーリングや試合でも絶妙のタイミングで技を繰り出せるようになるわけです。

黒帯は白帯より多くの技を知っているというより、むしろ一つ一つの技の精度が高いんですよね。だから一つ一つの技のレベルを上げたければ技練は必須です。

たまに「俺はドリル的なことは全然やらないよ」という天才肌もいるにはいますが、ほとんどの人はそうじゃないので強くなりたいんだったらやるべきですね。

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柔術の技練(打ち込み)だけではアウトプットできない

ただし、インプット作業をしているだけで使えるようになるかというとそうじゃないですよね。それはちょうど学校でどれだけ知識を身につけようと社会に出たら全く役に立たない新米社員とかと同じかもしれません。

知識は確かにあるし、セオリーの上ではできると分かっていても、じゃあ実際あなたはそれを使いこなせるの?っていう話になるわけです。

クロスガードの話に戻ると、先生に教えてもらったクロスガードの解き方だけをどれだけ反復練習したところで相手がその動きに合わせて別の攻撃を仕掛けてきたら、今度はそれに対応しないといけなくなります。

次々と繰り出される技にいちいち「こうやって、ああやって」とか考えていられないので、その先は経験と感覚の世界です。なので動画ばかり見て技オタクになるのもどうかと思います。

柔術の技練(打ち込み)は地味

最初にテクニックをちょこっとやって後はスパーリングという道場が多いのは技練の大切を分かりつつもできればみんなもっとスパーリングがしたいっていう会員が大部分だからじゃないでしょうか。だって打ち込みって地味だし、スパーリングと比べたら興奮に欠けますもんね。

柔術道場の生徒の大半は仕事をしながら夜に練習しますが、限られた時間の中ではなかなか技練に時間を割くことができないのも現実です。

せっかく汗をかきたくて道場に来ているのに何時間も反復練習をしたいですか、といえば多くの人はやりたがらないのも無理はないです。強くなりたいけど、強くなるためだけに人は柔術をするわけではないからです。

だからこそ逆にそういう地味で退屈なことを淡々と続けられる人が強くなれるんですよ。このバランスがすごく難しいんですよね。強くなれるんだからみんな毎日2時間技練しましょう、という道場だったらおそらく潰れてしまうんじゃないでしょうか。

柔術においてスパーリングはアウトプット

テクニックの反復練習がインプットならスパーリングはアウトプット(出力)作業といえそうです。覚えたことを実践する場。自分の持っている知識、経験、筋力、体力、スキル、その他もろもろのことを吐き出すとき、それがスパーリングじゃないでしょうか。

スパーリングで優劣を決めるのは一つの要素だけではありません。もし技を多く知っている人が有利なら技だけを磨けばいいですが、実際は筋力だったり、スタミナだったり、あるいは才能だったり、根性だったり、若さだったりといった色んな要素が複雑に絡み合って勝敗を決めます。

攻撃だけ強くてもいけないし、防御だけでもいけない。力だけ強くてもだめだし、小手先のテクニックだけでも通用しない。そうしたもろもろのことを総合的、実践的に学ぶにはスパーリングをやるのが一番です。

アウトプットとはいいつつもスパーリングにはあらゆる感覚を研ぎ澄ますインプットの一面もありますね。スパーリングだけしていてもそれなりに強くなれる理由がそこなんだと思います。

柔術のスパーリングでは総合的に上達する

スパーリングをするメリットは反射神経、体力、持久力、筋力、対応力、経験など総合的に上達が見込めることです。だから初心者でもスパーリングは絶対にやるべきです。

何をされているか分からなくてもいい。経験的に色々なことをやられておけばそれが後々活きるからです。

例えば一般の人だったら体重の重い人に上から馬乗りになられるなんていう経験はしたことがないはずです。抑え込まれた経験がないとそれこそサイドポジションを取られたらだけでもパニックになり、余計に苦しくなってすぐにタップしてしまいます。

でも慣れてくると負けはするけど色々な攻撃に耐えられるようになってきますよね。最初は顔を押さえつけられただけでも降参したくなっていたのが、徐々に抵抗できるようになるものです。

そういう意味でもスパーリングの経験を重ねることは大切です。技練をしなくても強い人はいますが、スパーリングをしないのに強いという人はいまだかつて聞いたことがありません。だからスパーリングはもちろん必須です。

柔術のスパーリングでは身につかないこと

スパーリングでは総合的な力を伸ばせるけど、個々の要素を集中して伸ばすにはそれぞれの専門的な練習が必要になってきますね。

技を伸ばすには技練。体力をつけるにはコンディショニング。筋力をつけるには筋トレ、といったようにスパーリングだけでは十分に手の届かない部分が存在するはずです。

そういった部分を修正する、あるいは向上させる意味でも練習を細分化することが大切です。技練の話に戻ると、スパーリング中でも技を試したり、技の練習をすることができますが、間違った動きのまま続けていくとやがて荒削りのまま強くなっていくことになります。

荒削りってどういうことかというと相手を圧倒できるけど大事な局面で極められないとかスイープができても相手にすぐ立たれちゃうとか、どこか甘い部分が残っていくんですね。

そういう部分がいくつもあったら自分と同じくらいの実力の相手と勝負したときに負ける可能性が高くなるはずです。

まとめ

長くなりましたが、結局はどっちも大事だよってことです。質問者の方もそうですが、多くの初心者はすぐに「正解」を探したがるけれど、それはやめましょうね。

「正解」なんて一つじゃないし、「あれは無駄だからやらない」とか「もっとこうしたほうが近道だ」といったように速い段階で決めつけるべきじゃないです。それよりも色々試して自分に合った上達方法を考えていく努力をしましょう。