最近、なにかとメディアに取り上げられることが多くなったブラジリアン柔術。その分、柔術道場は大賑わいを見せているところも少なくなく、競技人口および会員数が爆増中ということで業界にとってはウハウハな状況です。しかしその一方で柔術ビジネスが成長する中、いつの間にか柔術が万人のスポーツではなくなりつつあることを感じずにはいられません。そこで今回は、エリートスポーツ化している柔術について考えたいと思います。
柔術のエリートスポーツ化、とにかく金がかかる現状
ひと昔前まで日本での柔術の月謝は数千円から1万円ぐらいが相場でした。それに対し、最近では都心を中心に2万円を超える道場も普通にあり、個人ロッカーや道着クリーニングなどのサービスを含むプレミアム会員だと5万円を超えたりする道場も出てきていますね。ちなみに東京にあるとあるジムでは、プレミアムじゃなくても月額約4万円というところもありますね。
一方でアメリカでは柔術はすでに中〜上流階級向けスポーツとして定着しつつあり、有名どころのジムは月200〜300ドル以上が当たり前になっています。
とはいえ月謝が上がればその分、施設をより充実させることができるというメリットがあります。エアコン完備で清潔なトイレ、シャワーがあるというのは今や日本でもスタンダードになっていますよね。
さらに月謝が上がり、まともな利益を確保できるようになれば道場主やインストラクターが柔術だけで生活できるようになり、それによってクラスの質も上がり、自然と生徒のレベルも上がるという相乗効果もあります。なので月謝の高騰は一概に悪いことばかりじゃないです。
しかし柔術がモットーとしている「すべての人のための柔術(Jiu Jitsu for all)」という理念からかけ離れてきているのは否めないですね。
道着のブランド化が進むにつれ、1着2〜4万円は吹っ飛びます。さらに練習中のラッシュガードやスパッツの義務化、試合における道着の規定の厳格化などによって、あれもこれも買わされる事態になっており、月謝以外でもまあお金がかかります。道場によっては道着の色指定もあったりして、それこそ移籍する際には今まで使っていた道着が全部使えなくなったりします。
さらに最近、特に値上がりしたのが、大会出場費じゃないでしょうか。例えば直近のJBJJF主催の第13回関西柔術オープントーナメントの出場費が早期割引ありで、【JBJJF加盟団体所属】9,790円、【一般】11,790円。直前に申し込むと、【JBJJF加盟団体所属】14,980円、【一般】16,98円となっています。JBJJF主催じゃないローカルなトーナメントですら1万円を超えたりしますよね。
家の近くで開催される大会ならまだしも、遠方で開催される大会に出るにはさらに交通費、場合によっては宿泊費もかかります。つまり柔術の月謝を払い、大会に出るために新しい道着を買い、参加費を払って、遠くから遠征をしたら月に7万~10万円ぐらい余裕でかかってしまうのです。
そんな現状を見ていると、ふと思うのです。柔術で強くなるには才能や努力より先に、資金力が必要なのではないかと。
柔術がすでにテニスやゴルフと同じ構造である理由
さらに柔術を始める年齢層が年々早くなっているのを感じます。そっちほうが圧倒的に有利だからです。これは特に海外が顕著ですよね。それこそ3歳ぐらいで有名なアカデミーで習い始め、親が毎日送迎、毎週試合みたいなことが当たり前になりつつあって、強い子=親が強い(経済力・時間の融通が利く)みたいな完全なるマネーゲームになっているのです。
その代表例がAOJでしょう。顔立ちを見れば子供たちみんな絶対育ちいいでしょ、親が絶対金持ちでしょっていう風貌をしていて、早くから始めてるのはもちろん、学校にすら行かずホームスクールで勉強し、一日中練習している、さらには世界王者のプライベートレッスンまで受けている、という英才教育が行われているのです。これは完全にジュニアテニスやジュニアゴルフの構造と同じですね。
そしてそんな子供たちが早くから国内外で試合をしまくり、主要大会で活躍していくことで、今後もより一層エリート選手とそうではない選手のレベルの差が開いていくことでしょう。
お金がないと柔術は強くなれないのか?
じゃあお金がないと、柔術は強くなれないのかというと、一概にはそうとは言えないでしょう。お金があれば有利な環境で練習を積めるのはそうですが、ブラジルの貧しい地域からも続々と強い選手が生まれて来るのを見ても分かるように、いつだって環境のデメリットをはねのけて頭角を現してくる強者たちはいるのです。
ちなみにいまや柔術の顔といってもいいミカ・ガウヴォンも、かつてはブラジルのマナウスの激暑で不衛生な道場で練習し世界トップまで登り詰めた経緯があります。同門でADCC王者のベイビーシャークことジオゴ・ヘイスも貧しい家庭出身ながら柔術でのしあがってきた一人ですよね。彼の場合、友達が犯罪の道に行くのを見て、自分はそうなりたくないから柔術で頑張るしかなかった、といったようなことを、あるインタビューで語っていました。
柔術に限らず、人生においてはお金がなくても、頑張ってる若者には必ず手を差し伸べてくれる人が現れる、と僕は信じています。日本でも先生や道場主の好意で住み込みで練習させてもらっている若者も少なからずいるんじゃないでしょうか。
なのでお金がないから柔術強くなれねえよって思っている若者は決して諦めずに頑張ってください。じゃあお金がないおじさんおばさんはどうすればいいの?と言われたら返答に困りますが。




